農業を営んでいた方が亡くなった場合に考える順序
相続が始まったら、まず相続財産の把握をします。不動産については、名寄帳を取り寄せる。固定資産税の通知書をみてみるとよいでしょう。 預金等は、通帳等で確認する必要があります。 債務は、故人の話や郵便物で確認することになります。 そして、相続財産の一覧表を作ることです。
農家の方は、地元に本籍をおいてある方が多いかと思いますので、除籍謄本から、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍を取ることは比較的簡単化と思います。この戸籍から相続人を特定することになります。相続人の戸籍はおいおい取っていけばよいかと思います。
農業を継続するかは最大の問題です。都市部においても地方においても後継者不足は深刻です。まず、これからは農業を継続することができない前提で相続手続きを行うというのが農家の相続の基本となります。 たまたま、農業を継続する意思があっても、片手間で農業を継続できると安易に考えることは危険です。わずか、50坪でも100坪でも、農業を継続し、農地を管理することは大変なことで、承継した人の一生を決めることになります。 そして、農業だけを継続することはできませんので、多少の現金収入がある相続がセットでないと、農業を継続することは無理です。この点でも相続人間のバランスが取れないと、農業の継続は無理だと判断すべきです。
1次相続(父親の相続)の場合は、配偶者が農業を継続する例が多く、問題も少ないように思えます。 ところが、2次相続(母親の相続)の場合は、子供の代となり、その子供が農業を継いでいる例が少なく、前記1のように農業を承継すべきか迷うところです。
農業の継続が不可能と判断した場合は、直ちに、相続税の納税対策を考えなくてはなりません。 相続税の納税期限の10ヶ月から逆算して手続きを進める必要があります。つまり、納税期限の1〜2ヶ月前に、不動産の売却が済んでいなくてはならないので、納税期限の3〜4ヶ月前には、不動産の売買手続きをする必要があります。不動産の売り出しに3〜4ヶ月かかるとすると、納税資金のための不動産屋への依頼は、納税期限の7〜8ヶ月前から始めなくてはなりません。すると、49日を待ってから動いては遅いのです。 つまり、相続開始後に、直ちに測量を行い、遺産分割協議も、相続後4ヶ月以内にまとめておかねばならないのです。このくらいのスピード感が必要なのです。
農業を継続する場合は、農地として残す土地と前記のとおり納税資金のために売却する土地の分けることが必要です。残す土地は、優良物件となります結果、売却する土地は、相続人にとってやっかいな土地となるので、売却するには苦労が必要となります。 農地を残す場合、市街化地域ならば、相続税の納税猶予の制度を使うことになりますので、その手続きを農業委員会に早めに手続きをする必要があります。この手続きをするにあたって、遺産分割協議の成立が必要なので、これを早めにまとめておく必要があります。市街化調整地域ならば、これを農地として維持するか、手放すかと検討しておく必要があります。
以上のとおり、農家の相続は、納税期限の10ヶ月以内にすべて処理しなければならないので、かなり手続きを急いで行わなくてはなりません。また、測量士や税理士・不動産屋等との連携を取って期限どおりに仕事をしていかなくてはなりません。そこで、これら相続手続きをトータルで管理してもらえる人がいることが必要です。 弁護士は、法律や税務などに詳しく、他の専門家をまとめる能力があり、ぜひ、ご利用を考えてもらうといいかと思います。